事例
Intertek(英)
NavVis VLXを導入し、複雑なプロジェクト計画を革新
石油・ガス大手企業は広大で複雑なプラント施設の高精度な地上3Dデータをいかに迅速に取得するかという課題を抱えていました。NavVis社マッピング・パートナーであるIntertek社はNavVis VLXを活用し、この課題に対するソリューションを提供しました。
主なポイント
・石油・ガス大手企業は何マイルにもおよぶパイプ、大量のケーブル、鋼材、様々な設備が密集する約12万㎡の広大なプラント施設でNavVis VLXの実地テストを実施
・ウェアラブル型3Dレーザースキャナー「NavVis VLX」は地上型レーザースキャナー(TLS) よりも5倍も高速で計測
・地上レベルの計測において、ドローンよりもはるかに鮮明で高精度なデータ生成を実現
・生成された点群データは同社のエンジニアリング部門から高い評価を得て、既存のワークフローへの統合したことで「実質的なコスト削減」という具体的かつ大きなビジネス上のメリットをもたらした
・この成功を受け、同社はオペレーション部門をはじめとする各地域や部門全体へNavVis VLXの導入を拡大
品質保証と3Dデータ
Intertek社の事業開発担当であるGlen Kearns氏は同社を「世界中の産業界に品質保証を提供する企業」であると説明します。Intertek社は包括的な品質保証、試験、検査、認証を含む幅広いサービスを提供しており、化学、建設、政府機関、航空宇宙、ヘルスケア、製造に至るまで、数十業界にわたる大手企業と既に取引があります。
Intertek社においてKearns氏は特に石油・ガス業界向け3Dレーザースキャンサービスを専門としています。ある日、彼はTier 1に分類される大手企業の担当者から1つの依頼を受けました。その依頼とは広大で複雑なプラント施設の現状を正確にデジタルで再現するために従来の方式に代わる新しい3Dデータ取得する方法を見つけて欲しいというものでした。
3Dデータ計測での難点と制約
この担当者は既存施設への設備追加に際して代替案の比較検討を行う「プレフィード」と呼ばれる作業グループをサポートしています。彼らの業務は包括的な3Dデータに基づいており、そのデータを用いてプラント内の様々な設備のレイアウト検証、接合部の特定、詳細な移設ルート計画を立てます。これにより、機器移設がスムーズに行われることが可能となります。
この3Dデータを取得こそが極めて困難な課題となります。
プラント施設はその構造が驚くほど複雑です。「場所によって製油所は約1.62k㎡におよぶこともあります。数百、数千マイルにもおよぶ高密度の配管、ケーブル、ケーブルトレイ、構造用鋼材、主要な設備が文字通り密集しているため、データ取得は非常に複雑なのです」
もう一つの重大な問題はコストと時間的な制約です。Tier 1担当者は「私のチームは準備作業を行っているため、詳細設計と建設を行うチームよりも予算がはるかに限られていて、スキャンを迅速に、高品質で、しかも安価に実施する必要があります」と厳しい条件をコメントしています。
従来の地上型レーザースキャナーの制約
長い間、このチームは地上型レーザースキャナー (TLS)を使用するサービスプロバイダーに計測を委託していました。当時は「他に代替となる技術がなかった」ため、TLSが唯一の選択肢だったのです。TLSは高精度・高密度な3Dデータを生成できるため、技術的な要求水準は十分に満たしていました。
しかし、Intertek社Kearns氏は、こうした複雑なプラント施設ではTLS計測が非常に時間がかかることを経験から把握していました。「TLSでは質の高いデータを確実に取得するために、様々な角度から計測する必要があり、スキャンの計画、三脚の設置、計測という作業を際限なく繰り返す必要があります」とコメントしています。
TLSでプラント施設全体の3Dデータを取得する場合、時間と予算の制約が大きな障害となります。「1日でスキャナーを設置できる場所の数は限られているため、割り当てられた期間と予算内でプラント全体の作業を完了させることが困難な場合があります。すべてのデータを取得しようとすると多くの時間をその施設で過ごさなければなりません」とKearns氏は指摘します。
さらにTLSは、プラント施設特有の狭いスペースでの機動性にも欠けています。「込み入ったエリアをスキャンする場合、パイプなどの遮蔽物の下に潜り込む必要がある場合は、三脚からスキャナーを取り外して地面に設置する必要がありますが、三脚をそこまで低く下げられないのは大きな問題です」。
Tier 1企業担当者によるとTLSが提供するデータ品質は、時間、労力、費用に見合うものではありませんでした。特に代替案の比較検討、接合部の特定、ルート計画といった初期段階の業務においては、TLSの精度はそれほど重要ではなかったためです。
そのため彼らはこれらの課題を解決するより優れた3Dレーザースキャンツールを見つけるためにKearns氏とIntertek社に協力を求めました。
ドローン(UAV)によるテストと限界
彼らが最初に検討した代替案はドローン(UAV)でした。これらの空中計測プラットフォームは写真測量用カメラやLidarセンサーを搭載し、遠隔操作で飛行させることができます。施設の複雑な構造を上空から撮影することで、UAVはTLSよりもはるかに高速なワークフローを実現出来ると期待されました。
Tier 1企業担当者は天然ガスを燃焼させて電気と蒸気を生成する熱電併給施設を撮影することで、UAVの実地テストを行うことを決定しました。
「使用した施設はカリフォルニアの油田内に位置し、約12万㎡の広大な敷地には、高さ約91メートルの塔やタンク、何マイルものパイプ、大量のケーブル、鋼材、主要な設備など複雑なプラントエリアが広がっています」
このテストは単なるPoCではなく、実際のプロジェクトのために実施されました。「既存設備の増築・拡張計画のためにデータが必要でした」と担当者は説明します。「当時、炭素回収利用貯留ユニットを建設する計画が進んでおり、そのユニットを既存施設に接続するための接合部を正確に特定する必要がありました。同時に新設予定のあらゆる機器のレイアウト設計や配管ルートの計画も、並行して進める必要があったのです」
しかし、ドローンを飛ばして取得したデータを調べるとすぐに、これが単独で完全なソリューションではないことが判明しました。
「ドローンは上空からの撮影には最適ですが、配管などが複雑に絡み合う地上レベルに到達すると、解像度が全く得られないのです。私たちはこれを”the melted ice cream effect”と呼んでいます。全てが溶けているように見えるためです。全ての詳細なデータを取得するために、この施設を地上で計測できるツールも不可欠でした」
NavVis VLXによるSLAMスキャンと成果
石油・ガス業界のレーザースキャンに精通するKearns氏は、顧客が求める地上レベルの高精度な計測には同時自己位置推定式(SLAM)スキャナーが最適であることを確信していました。SLAM式スキャナーは、技術者が歩きながら計測できるため、現場での作業スピードが飛躍的に向上します。
また、ハンディ型やウェアラブル型であることから、密集したエリアや遮蔽物がある場所でのスキャンに極めて高い操作性を発揮します。さらに、市場をリードする最新のSLAMスキャナーは、従来のTLSに匹敵するほどの高精度を実現しています。
「市場には数多くのSLAMスキャナーが出回っていますが、顧客は私たちに最適なソリューションを見つけてくれると信頼してくれています」とKearns氏は語ります。「そこで、主要な3Dスキャナーを全てテストした結果、NavVis VLXが最も優れていると判断しました。最も汎用性に優れており、パノラマ画像はより鮮明で、写真のようにリアルでした。また、点群全体の密度、精度、解像度が最高レベルで、このデータを担当者に見せたところ、NavVis VLXこそが彼らのニーズを満たす最も優れた製品であることに同意しました」
担当者が熱電併給施設でウェアラブル型3Dレーザースキャナーのテストを実施した結果、地上レベルのデータ取得に必要な要件をすべてクリアしました。「SLAMスキャンは当社にとって未知の技術でしたが、NavVis VLXの機能性は今回の用途において三脚式スキャナーよりも優位性があると予想していました。そして、その予想は見事に的中しました」と担当者は振り返ります。「実際、三脚式スキャナーを使用した場合と比較してわずか20%ほどの時間でプラント全体のスキャンを完了させることができました」
NavVis VLXを活用したSLAMワークフロー
このトライアルが成功を受け、Kearns氏チームは数十箇所に及ぶ複雑なプラント施設の計測において、NavVis VLXを「標準ツール」として採用しました。現在のワークフローは以下の通りです。
まず、顧客から提供された現場の図面をもとに、基準点や測量基準を特定します。次に、Intertek社測量ツールとNavVis VLXを持った2人1組のチームを現場に派遣します。現場では、まず1名が敷地内を巡回し、事前に提供された基準点に紐づけながら測量ターゲットを設置し、基準を確立します。並行して、もう1名がNavVis VLXを装着し、施設内の計測を開始します。
Kearns氏は計測の際の徹底事項について次のように述べています。「スキャンを行う際、作業員はNavVis VLXに搭載された機能を使って、適切な数のターゲットを確実に取得するようにします。また、顧客が計画に必要とするすべての基準点、測量基準、接続点も漏れなく計測することも徹底します」
NavVis VLX計測の主な利点
このNavVis VLX計測ワークフローの最大の利点はスピードです。
Kearns氏によると、Intertek社は測量作業を含めても複雑なプラント施設の数百万フィートにおよぶエリアをわずか1日で計測可能になったと述べています。「従来の三脚式スキャナーでは、これは絶対に不可能でしょうね」と彼は冗談交じりに語っています。
Kearns氏はまた、NavVis VLXを活用することで、遮蔽物の多い環境でも極めてスムーズに計測できるようになったと述べています。
「スキャナーを装着して持って歩き回るだけで施設内の密集した場所にも非常に簡単に入り込むことができます」とKearns氏は述べています。
「込み入ったエリアではスキャナーを巧みに動かしながら、機器、配管、すべてのプロセスエリアを様々な視点、角度、アプローチからデータ取得できます。『今日は50箇所のスキャン分しかできないが、どうやってデータを取得しようか?』と時間制約の懸念はもはや必要はありません」
この高速、流動的で、柔軟なワークフローにもかかわらず、Kearns氏は「取得されたデータは正確で高密度です」と断言しています。
顧客にとってNavVis VLXの魅力
NavVis VLXの主な魅力は必ずしも顧客が自ら計測を行うことによるワークフローの利点ではありません。Kearns氏の担当する大手顧客は「ハードウェアを購入するのではなく、Intertek社のようなスキャナーを操作できるマッピング・パートナーに協力を依頼します。そして、必要に応じて協力を依頼して、自らに代わって作業をしてもらうのです」と述べています。
顧客がNavVis VLXに感じる真の魅力は、データの品質、取得後のスムーズなワークフロー、そして圧倒的なROI(投資収益率)にあります。
顧客の担当者は次のように述べています。「私のチームのエンジニアたちは、このデータを非常に高く評価しています。NavVisで生成されたデータは、まるで施設内を実際に歩いているかのような臨場感があるからです」。これは視点が約30m以上も飛び飛びになり、まるで”テレポート”を繰り返すようなTLSのパノラマ画像とは対照的です。TLSのデータは視点が断続的で、エンジニアが直感的に作業できるものではありませんでした。一方、NavVis VLXのデータは施設内を途切れることなくナビゲートし、自由に『歩き回る』感覚を提供するため、エンジニアリング業務の質を根本から高めています。
Kearns氏はシステムの柔軟性こそがNavVisの設計思想の核心であると実感しています。「NavVisは他システムとの相互運用性において非常に優れた成果を上げています。NavVis VLXで収集したすべてのデータを、使い慣れた他の可視化ツールや解析ソフトウェアでシームレスに閲覧・活用できる点は、実務において極めて大きな利点です」
この高い相互運用性があるからこそ、世界展開する大手顧客もNavVis VLXの全社的な導入を検討できるのです。担当者は次のように説明します。「当社は世界100カ国以上に拠点を置いています。数十に及ぶ各地域では、それぞれ異なるソフトウェアツールを使用しているのが実情です。例えば、オーストラリア、カザフスタン、そして北米の拠点で、それぞれ異なる可視化ツールが使われていることも珍しくありません。だからこそ、あらゆる環境に適応できるNavVis VLXの柔軟性が、グローバル展開における重要な鍵となるのです」。
ROI(投資収益率)と経済的利益について、NavVis VLXがすでに「真の節約(コスト削減)」をもたらしていると担当者は断言しています。
「使わなかったすべての費用を数値化するのは困難です」と認めつつ、「しかし、施設の拡張前にエンジニア12人のチームをヒューストンからカザフスタンに派遣して現場視察を行う必要が無くなるたびに、私は実質的なコスト削減を達成していることになります。NavVis VLXを使えば、エンジニアにデータを送信し、彼らが本拠地オフィスから作業してもらうことができます。これはとても価値のある効率化と言えるでしょう。」と述べ、出張費や人件費の大幅な削減効果を強調します。
NavVis VLXの企業全体への展開
担当者は初め、この巨大な石油・ガス会社内の小さな1つのグループをサポートしたに過ぎないと強調します。しかし、NavVis VLXが彼自身のグループで非常に優れたパフォーマンスを発揮したため、彼はこのSLAMレーザースキャンシステムを企業全体の他グループにも提案し始めました。現在このスキャナーは社内で大変な人気を集めています。
西テキサスの同僚と話をした際、「彼らは多くの処理ユニットを担当しています。それぞれのユニットはわずか数個のタンクと数個のポンプと数本の配管で構成されています。しかし、そのユニットが数十台、数百台と非常に多く存在し、さらに極めて遠隔地に位置しています。そのため、写真を撮ったり測定したりするためだけに何時間も掛けて車で出かけなければならず、大きな労力を費やしていました」
この問題を解決するために、担当者はNavVis VLXを推奨しました。一度だけ現場に出向いてスキャンを行い、データを公開すれば、本拠地オフィスの担当者がそのデータにアクセスできるという考えです。簡単な情報を得るためだけに数百マイルも運転する代わりに、本拠地オフィスにいる専門チームはデータを閲覧し、必要な情報を瞬時に入手できるようになりました。
また、大規模な定期整備を頻繁に行うオペレーション部門にも、NavVis製品を紹介しました。プラントが停止しているときは製品を製造していないため、彼らにとっては一分一秒を争う迅速な作業完了が求められます。現在、同社のオペレーション部門は、独自の計画立案にNavVis VLXスキャンを使用しています。それは、NavVis製品が迅速に計測できて、精度もニーズを満たしているためです。彼らはボルトとナットのレベルまでのデータを必要としているわけではありません。
NavVis VLXのデータは、非常に詳細な配置計画を行うのに役立ち、メンテナンスのために機器をどこに移動するかを事前に決定できます。つまり、大規模定期整備の期間が短縮されて、プラント停止による損失額の削減につながっています」。
スケールメリットを生かしたレーザースキャンの価値創出
担当者が述べているように、NavVis VLXは、大手石油・ガス会社全体の様々な用途に適しています。「このツールは、全ての部門と拠点で同じように機能しています。エンジニアリングチームのような小さな組織にとって役立つだけではなく、西テキサスの現場、他プラント施設、さらにはオペレーション部門でも活用できます。さらに、それぞれのグループが自部門とは異なる固有の価値をこのツールから生み出すことができるのです。
担当者は最終的に「NavVis VLXの拡張性は私たちのような大企業にとって非常に重要です」と結論付けています。
「そして、そこにこそ真の価値があります。これは単なるコスト削減を超えたメリットです」。

