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Allinq Digital(オランダ)-2

スキポール空港、2030年の『世界で最も持続可能な空港』実現に
向けてデジタルツイン構築を加速

アムステルダム・スキポール空港は、業界トップクラスのAEC企業と連携し、最先端のScan-to-BIM技術を活用した大規模な空間デジタル化プロジェクトを推進しています。

概要
・Allinq Digital社はNavVis VLXと自社開発の自動モデリングツールを組み合わせることで、Scan-to-BIMのコストを1㎡あたり約68%削減
・スキポール空港はこれまで採算が合わず実現できなかったBIMモデリングプロジェクトにも着手可能に
・その一例として、空港側は約25万㎡に及ぶ空港最大級の駐車場複合施設のモデリングを同社に発注

本ケーススタディ第1部では、Allinq Digital社がNavVis VLXを活用して革新的なワークフローを構築し、BIMモデリングの大幅なコスト削減を実現したプロセスと、それを通じて築かれた強固なパートナーシップについて紹介しました。
続く第2部では、このコスト削減の成果をどのように活かし、両社が更なるプロジェクト展開を進めているのかに焦点を当てていきます。
新規プロジェクト

アムステルダム・スキポール空港では現在、最大規模の駐車場施設「P1」の改修プロジェクトが進行しています。本プロジェクトでは新設エレベーターの導入や走行路面を構成するコンクリート床版の伸縮継手の更新が主なテーマとなっています。

これまでの協業実績を踏まえ、空港は革新的なソリューションを提供するAllinq Digital社に対し、P1駐車場全体の点群データ取得と高精度なBIMモデルの構築を依頼しました。取得した点群データは必要なコンクリート量の算出や資材リストの作成、各種寸法計測に活用されます。また、完成したBIMモデルは施工業者とも共有され、施工計画の最適化や作業効率の向上に寄与する見込みです。

「この作業はスピードが非常に重要でした。もし遅れが生じれば、利用者の動線に影響が出て迂回が必要になります。一方で、初期段階から正確なデータを把握できていれば、施工プロセスを効率化し、大きな混乱を未然に防ぐことができます。」とGoor氏は述べています。

複雑な大規模空間と多数の不可視領域

このScan-to-BIMプロジェクトは一見シンプルに思えるかもしれません。しかし、スキポール空港の駐車場複合施設という特殊な環境においては、その実行には非常に高度な対応が求められました。

5階建て・総面積約25万㎡(サッカー場約47面分)に及ぶこの巨大施設には、多数のテクニカルルームが点在し、配管や設備、各種インフラが高密度かつ複雑に入り組んでいます。さらに大きな制約となったのが、空港運営を止められないという点です。スキャン作業中も駐車場には常に車両が存在しており、Allinq Digital社のチームは、車の間を縫うように移動しながら、死角を最小限に抑えつつデータ取得を進める必要がありました。

さらに空港側からはゲートや照明設備はもちろん、細かな配管に至るまで、施設内のあらゆる要素を高精度で再現することが求められており、プロジェクト全体の難易度をさらに引き上げていました。

実質的な経済価値

Allinq Digital社がTLS(地上型レーザースキャナー)を採用していた場合、Goor氏はこのプロジェクト完了に6か月以上要した可能性が高いと見ています。
「駐車車両の間を縫いながら死角を回避して計測する必要があり、作業効率は大きく低下します。納期を守るのは極めて困難だったでしょう。過去には最大8台のTLSを同時に使って工程短縮を図ったこともありますが、今回の現場ではそれでも対応しきれなかったはずです。」

さらに同氏は、データ量の問題にも触れています。「TLSはモバイルスキャンに比べてデータ容量が非常に大きくなります。その結果、ストレージコストの増加やデータ転送の遅延といった新たな課題も生じます。」

仮にTLSしか選択肢がなかった場合、改修前に駐車場全体の点群やBIMモデルを整備することは現実的ではなく、大幅な費用増と工期遅延は避けられなかったでしょう。その結果、建設プロセスにおいて3Dデータがもたらすメリットも十分に活かせなかった可能性があります。しかし、NavVis VLX、NavVis IVIONそして自動モデリングを組み合わせたワークフローを構築したことで、このScan-to-BIMプロジェクトは初めて現実的なものとなりました。

技術的課題の克服とワークフローの最適化

Allinq Digital社は当初、NavVis VLXで取得した点群データに対し、内壁形状を基準とした自動位置合わせを試みました。しかし、この方法は今回の現場には適していないことが判明しました。

Goor氏はその理由を次のように説明しています。「計測距離が長くなるにつれて点群密度が低下し、さらにフロア間をつなぐスロープ部分でデータの欠損が生じました。その結果、正確な位置合わせが難しくなり、自動処理に必要な特徴量が不足していたのです。」そこで同社はNavVis社のサポートを受けながらアプローチを見直し、より実践的なワークフローを構築しました。

「検証の結果、スキャン毎に3〜5点の地上基準点(GCP)を設置する方法に辿り着きました。下層階では構造物の影響で測量条件を満たせず、基準点の配置に苦労しましたが、NavVisからの提案により解決することができました。」この手法により、標準的なScan-to-BIMプロセスを維持しながら精度を確保することが可能となり、最終的にはスクリプトを用いてRevit要素の自動生成と正確なモデル配置を実現しました。

空港プロジェクトがもたらした成果

Allinq Digital社はNavVis VLX、NavVis IVION、そして独自の革新的なScan-to-BIM手法を組み合わせることで、スキポール空港でのプロジェクトにおいて高い成果を達成しました。「NavVis VLXの運用に慣れるにつれ、取得データの品質に強い満足感を得られるようになりました。特に今回のようにスピードが求められるプロジェクトにおいては、その性能は非常に優れており、私たちの期待を大きく上回るものでした」とGoor氏は述べています。

また、空港側の評価も非常に高いものでした。「彼らもこの成果に大変満足しており、作成したモデルをIVION上に統合して、伸縮継手の補修や進行中の改修プロジェクトに活用しています。当初の狙い通り、このモデルはすべての施工業者にとっての基盤データとなりました」

一方で、新しいワークフローやデータ形式の導入には、一定の習熟期間が必要であることも明らかになりました。Allinq Digital社がNavVis社のサポートを受けて課題を克服したように、施工業者側にも新しいプロセスへの適応が求められました。

「施工業者にとってBIMモデルの活用は初めての試みだったため、初回プロジェクトで即座に工期短縮へと結びついたわけではありません。しかし、この経験を通じて、今後は建設プロセスの効率化に大きく貢献していくことは間違いありません」と、Goor氏は将来への期待を込めて語りました。

デジタルツインが創出する新たな価値

このScan-to-BIMプロジェクトの価値は、単なる建設用途にとどまりません。アムステルダム・スキポール空港では、このBIMモデルを活用し、乗客向けのAR(拡張現実)ナビゲーションアプリの開発まで視野に入れています。

Goor氏は、その構想を次のように説明します。
「乗客が空港に到着して駐車後、スマートフォンを使えば、アプリがBIMモデルや点群データと照合して現在地を即座に特定します。そしてARを通じて、搭乗ゲートまでスムーズに案内することが可能になります。さらに、帰着時の利便性向上にもつながります。空港に戻った際も、自分の車の位置までナビゲートします。駐車場所が分からなくなるという課題は多くの人が経験していますが、この機能は非常に有効です」

Goor氏は続けます。「こうした取り組みは、乗客体験の質を大きく引き上げる可能性を持っています。最終的な狙いは、まさにそこにあります」

「そして、その実現の前提となるのが高精度なデジタル基盤です。このようなサービスを成立させるには、駐車場の“デジタルレプリカ”が不可欠です。そして、それを構築するScan-to-BIMが経済的に成立してこそ、初めて実用化が可能になるのです」

顧客との信頼構築と新市場への進出

ここまで、Scan-to-BIMにおけるコスト削減や工期短縮、将来的な活用領域の拡大、ARアプリの基盤構築といったNavVis VLXがもたらす多くの利点を見てきました。但し、これらは主に顧客である空港側の価値です。では計測を担ったAllinq Digital社には、どのような成果があったのでしょうか。

その答えはアムステルダム・スキポール空港との強固なパートナーシップの構築とそのさらなる深化にあります。Goor氏はこう語ります。「NavVis VLXを基盤とした自動モデリングの仕組みが、この関係をより強固なものにしています」

さらに同氏は、プロジェクトの意義について次のように説明します。
「スキポール空港は運営が非常に複雑で、オランダ国内でも極めて重要なインフラです。そのため、このBIM化プロジェクトには特有の難しさがありました。だからこそ、私たちの成果は空港や主要請負業者にとどまらず、国内の様々な産業からも注目を集めています」

「スキポール空港の運営の複雑さや、オランダ国内におけるその重要性を考えれば、このBIM化プロジェクトには極めて高いハードルがありました。だからこそ、私たちが収めた成果は空港や施工業者のみならず、国内の多種多様な産業界からも注目を集めているのです」

実際、この取り組みは他分野にも広がりを見せています。Allinq Digital社は現在、オランダ全土で進むエネルギー転換プロジェクトにおいても重要な役割を担っています。「私たちは高電圧変電所を短期間でスキャンし、点群データを高精度なLOD350のBIMモデルへと変換しています。施工業者はこのモデルを活用することで、設備を停止することなく、信頼性の高いデータに基づいた意思決定が可能になります」

最後に

Goor氏は今回の空港プロジェクトの成果を次のように総括しています。
「既存施設におけるScan-to-BIMのコストを大幅に抑えながら、高精度なモデルを実現できたことで、Allinq Digital社の市場での存在感は急速に高まりました。BIMは老朽設備の更新を通じたCO₂排出削減など、企業が掲げるさまざまな戦略目標の達成を後押しする重要な手段です」

言い換えれば、アムステルダム・スキポール空港でのScan-to-BIMプロジェクトの成功は、Allinq Digital社にとって大きな転機となりました。それは、さらなる事業拡大と新たなパートナーシップ創出へとつながる、象徴的なマイルストーンとなったのです。

 

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